The Japanese Journal of Antibiotics
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[最近の抗菌薬XXXIV]
勝 正孝斎藤 篤
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1989 年 42 巻 3 号 p. 543-566

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抄録

Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) は広範な抗菌スペクトルと強い殺菌作用を有し, 多くの感染症の治療に汎用されている。反面, AGsは腎毒性, 聴器毒性, 神経-筋伝達抑制作用を有しており, 又, AGs使用に伴い出現する耐性菌も問題となつている。Isepamicin (以下ISP, 治験コード: HAPA-B,(+)-O-6-Amino-6-deoxy-α-D-glucopyranosyl-(1→4)-O-[3-deoxy-4-C-methyl-3-(methylamino)-β-L-arabinopyranosyl-(1→6) ]-2-deoxy-N1-[(S)-isoseryl]-D-streptamine) は, これら有効性及び安全性両面からの問題点の改良を目標に昭和52年に米国シェリング社において創製され, 東洋醸造株式会社における種々の検討の結果, その有用性が示唆されたため東洋醸造株式会社とエッセクス日本株式会社により開発された新しいAGsである (Fig. 1)。
ISPはMicromonospora purpureaの培養によつて得られるGentamicin (GM) 群の一成分である Gentamicin B (GM-B) の1位のアミノ基にIsoserine (HAPA: Hydroxyaminopropionic acid) を導入して得られる新しいタイプのAGsであり, 化学構造的にはKanamycin (KM=KM-A) から得られるAmikacin (AMK) に類似している (Table 1)。
AMKは有効性, 安全性からみてAGsの中でも優れた特徴を有し, 現在汎用されているが, ISPは AMKに比べて抗菌力が強く, 更に腎毒性, 聴器毒性等の安全性にも優れ, 耐性菌も少なく, GM耐性 Fig. 1. ISPの化学構造菌だけでなくAMK耐性菌に対しても抗菌力が認められている。又, AMKを対照薬として実施された二重盲検比較試験で, ISPは呼吸器感染症並びに複雑性尿路感染症において, 臨床的にもその有用性が認められている。

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