1990 年 43 巻 5 号 p. 860-871
キノロン系合成抗菌剤Nornoxacin (NFLX, AM-715) の小児科領域における基礎的並びに臨床的検討を行い, 下記の成績を得た。
基礎的検討として, NFLXの血清中濃度及び尿中排泄率を測定した。NFLX1.7mg/kgを空腹時に投与した場合, 濃度ピークは投与後1時間にあり0.16μg/mlで, 半減期は2.5時間, 8時間までの尿中排泄率は14.5%であった。NFLX2.4mg/kgの投与では, 濃度ピークは投与後2時間の0.69μg/mlで, 半減期は1.8時間, 6時間までの尿中排泄率は29.1%であった。一方, NFLX3.2mg/kg及び4.4mg/kg2例と4.8mg/kg1例, 計3例の投与の平均では, 濃度ピークはいずれも投与後1時間にあり各々0.81μg/mlと平均1.17±0.48μg/mlで, 半減期は各々2.7時間と平均3.0±0.5時間, 8時間までの尿中排泄率は, 各々28.4%及び平均38.5±13.0%であった。
臨床的検討は扁桃炎5例, 気管支炎1例, 腸炎14例, 尿路感染症10例, 亀頭包皮炎1例・膿痂疹1例, 膿疸症1例の計33例について行い, 臨床効果は著効14例, 有効15例, やや有効2例, 無効2例で, 有効以上は計29例で87.9%の有効率であった。又, 細菌学的効果はStaphylococcus aureus 1例, Streptococcus pyogenes 1例, Haemophilus influenzae 1例, Salmonella sp. 3例, Campylobacter jejuni 6例, Escherichia coli 5例, 及びEnterococcusfaecalis とProteus mirabilis, Pseudomonas aeruginosa とStaphylococcus haemolyticus, E.faecalisとP.aeruginosaの混合感染例各々1例の計20例につき検討し, H.infuenzaeの1例とC.jejuniの1例以外は全例菌消失をみた。
副作用は臨床症状・所見及び検査所見の異常について検討したが, いずれも特記すべき異常所見は認めなかった。なお, 関節障害時に異常値を示すカテプシンD活性, 血清ムコ蛋白 (ASPROGP), 尿中ムコ多糖, Al-P活性, Al-P電気泳動でも本剤によると思われる変化は認められなかった。