1991 年 44 巻 9 号 p. 1007-1012
モルホリン系抗真菌剤Amorolfine (MT-861) の表在性皮膚真菌症治療における有用性を評価するため, 足白癬101例, 体部白癬42例, 股部白癬29例, 爪白癬1例, その他9例合計182例の皮膚糸状菌症患者から新鮮分離したTrichophyton rubrum 112株, Trichophy tonmentagroehytes 65株, Microseorum canis3株及びEeidermoehyton floccosum2株合計182株及び皮膚カンジダ症患者から新鮮分離したCandida albicans39株について, MT-861及びClotrimazole (CTZ), Bifonazole (BFZ) の両対照薬剤のin vitro抗菌活性を寒天平板希釈法にて測定し下記の結果を得た。
1. T. rubrum 112株に対する3薬剤の抗菌活性の強さはMT-861>CTZ>BFZの順であり, MT-861の幾何平均MIC値は0.0070μg/mlと低かつた (分離部位の異なる菌種間の感受性は, BFZにおいて相違が認められ, 足分離株は体部分離株の約2.3倍大きい幾何平均MIC値を示した)。
2. T. mentagrophytes, M. canis 及びE. floccosum に対する3剤の抗菌活性の強さの順位は, T. rubrumと同様であり, 最も強い活性を示したMT-861のそれぞれの菌種に対する幾何平均MIC値は0.0267, 0.0079, 0.0018μg/mlであつた。
3. C. albicans 39株に対する MT-861のMIC値は0.01~10μg/mlの幅広い範囲に分布したが, その幾何平均MIC値 (0.1762μg/ml) はBFZ, CTZのいずれよりも低かつた。
4. 以上の成績から, MT-861は皮膚糸状菌及びC.albicansの臨床分離株, 皮膚科領域の真菌症起因菌に対して, 現在臨床的に頻用されている代表的なイミダゾール系薬剤CTZ及びBFZのいずれよりも優れたin vitro活性を示すことが実証された。