The Japanese Journal of Antibiotics
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新鮮臨床分離株に対するRokitamycinの抗菌活性
出口 浩一横田 のぞみ古口 昌美鈴木 由美子鈴木 香苗深山 成美石原 理加小田 清次
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1992 年 45 巻 12 号 p. 1609-1621

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抄録

1991年の後半において, 当所に全国の医療機関から送付されてきた臨床分離株, 及び各種感染症患者採取材料から分離・同定した臨床分離株の中から, 主として外来患者由来と考えられる株を対象にして, Rokitamycin (RKM) に対する抗菌活性を検討することを目的に対照薬剤を加えて最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 以下の結論を得た。
1. 供試400株のMacrolides系抗生物質 (MLs) 高度耐性株 (MIC値≥100μg/ml)の耐性パターンは55に分類されたが, 交叉耐性の割合はStaphylococcus spp. においては14員環MLsのErythromycin (EM) とClarithromycin (CAM) が100%, EMとOleandomycin (OL) は85.2%であった。16員環MLs高度耐性株は14員環MLsに比較して低率であつたが, 16員環MLs間の交叉耐性の割合は, Acetylmidecamycin (MDM-AC) とKitasamycin (Leucomycin (LM)) は100%, MDM-ACとJosamycin (JM) は93.3%, MDM-ACとRKMは53.3%であった。一方, Streptococcus spp., Peptostreptococcus spp. のそれは14員環MLsと16員環MLsにほぼ共通の耐性パターンを示したが, RKMには相関を示さなかった。
なお, Anaerobic streptococci, Bacteroides fragilis groupでは大部分が14員環MLsと16員環MLsに共通の耐性パターンを示したが, 一部にはStaphylococcus spp. と類似のパターンも認められた。
2. 1975~1980年, 1986年, 及び1989年分離株と今回の検討成績を比較したMLs耐性菌の経年的推移は, Staphylococcus aureusはほぼ横ばい状況, Streptococcus pyogenesは1975~1980年分離株に比較して割合が低下しているが, Streptococcus pneumoniaeには経年的な増加が認められた。
3. 臨床分離株のMLs耐性の多くは誘導型であるが, そこにおける誘導には薬剤間に差があり, 14員環MLsにおいては強く, 16員環MLsにおいても生じる。そして, 16員環MLsの中にあつてはRKMの誘導性が最も低いことが示唆された。これらのことから, RKMは1990年代を迎えた今日においても, 臨床的に有用性の高いMLsの一つとの結論を得た。

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