The Japanese Journal of Antibiotics
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慢性腎不全患者における経口用セフェム系抗生剤の血漿蛋白結合に関する研究
黒山 政一熊野 和雄本橋 茂村瀬 勢津子朝長 文弥
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1993 年 46 巻 4 号 p. 323-330

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抄録

代表的な経口用セフェム系抗生剤であるCefdinir, Cefixime, Ceftibutenの蛋白結合率を, 健常人及びContinuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD) 施行, Hemodialysis (HD) 施行の慢性腎不全患者各6名の血清を用いて, 平衡透析法により同一条件下で比較検討した。慢性腎不全患者における各経口用セフェム系抗生剤の蛋白結合率は健常人と比較して低下し, 明らかな遊離型薬物濃度の上昇がみられた。HD施行患者の透析前後における検討において, 抗血液凝固剤としてヘパリンナトリウムを使用した場合, 各経口用セフェム系抗生剤の蛋白結合率は, 透析開始直前と比較し透析終了直後で明らかに低下していた。一方, 抗血液凝固剤としてメシル酸ナファモスタットを使用した場合, 各経口用セフェム系抗生剤の蛋白結合率はほとんど変動しなかつた。代表的な遊離脂肪酸の一つであるパルミチン酸を添加した健常人プール血清を用いた検討では, 各経口用セフェム系抗生剤の蛋白結合率はパルミチン酸の添加量が増すと共に減少した。ヘパリンナトリウムを使用したHD施行時の蛋白結合率の変動は, 透析時に使用されるヘパリンによりリパーゼが活性化され血清中の遊離脂肪酸濃度が増加したたあと思われる。
CAPD施行患者の蛋白結合率低下の要因に関しては, 今後更に検討したいと考えている。
今後, 慢性腎不全患者への経口用セフェム系抗生剤の投与に際しては, このような蛋白結合率の変動をも考慮した投与設計が望まれよう。

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