The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児, 未熟児におけるFlomoxefの基礎的・臨床的検討
本廣 孝丸岡 隆之長井 健祐沖 眞一郎津村 直幹佐々木 宏和荒巻 雅史古賀 達彦阪田 保隆富永 薫久田 直樹山下 文雄高城 信彦二宮 正幸高橋 耕一佐久間 浩子間 克麿天本 正乃松元 透山下 祐二今井 昌一市川 光太郎半田 祥一小財 健一郎山田 秀二岡林 抄由理天本 祐輔三宅 巧田中 耕一松隈 義則中村 貴美子荒木 久昭村上 義比古桑野 瑞恵杉山 安見児田中 洋子平田 知滋西見 寿博田中 信夫石川 豊松元 康治永山 清高安岡 盟橋本 武夫岩元 二郎東 浩一渡辺 順子橋野 かの子伊達 是志下飛田 毅山田 孝吉永 陽一郎山村 純一浦部 大策林 真夫村上 泰由大原 延年荒牧 修一石本 耕治織田 慶子川上 晃原田 豊大滝 悦生久保田 薫西山 亨石橋 伸作杉村 徹前野 泰樹山口 郁代岩永 理香子牛島 高介山川 良一石井 正浩
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1993 年 46 巻 7 号 p. 547-567

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抄録

β-Lactam系抗生物質のOxacephem系薬剤に属するFlomoxef (FMOX) を新生児6例, 未熟児10例, 計16例に20mg/kgか40mg/kgをOne shot静注で投与し, 血漿中濃度, 尿中濃度及び尿中回収率を測定, 0生日から90生日の主に新生児, 未熟児の細菌感染症44例と感染予防を目的として52例, 計96例に本剤を1日投与量平均85.5mg/kg, 分2~4, いずれもOne shot静注で, 平均9日間投与し, 臨床効果, 感染予防効果, 細菌学的効果をみると共に副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
1, 5, 7, 16生日の新生児各1例に20mg/kg, One shot静注で投与して血漿中濃度は5生日例は投与15分, 他2例は投与後5分が最高濃度で62.5~99.7μg/ml, 半減期は1.48~1.78時間, AUCは112~161μg・hr/mlであった。5, 16, 19生日の未熟児各1例に同量をOne shot静注で投与した場合の血漿中濃度は5生日例は投与後5分で採血できたが, 16生日と19生日例同じ時間に採血できず, 投与後15分の採血で, いずれも初回の採血時間に最も高い濃度を示し, 63.6~79.9μg/ml, 半減期は1.69~2.20時間, AUCは174~201μg・hr/mlであつた。17生日と24生日の新生児各1, 2例に40mg/kg, One shot静注しての血漿中濃度はいずれも投与後5分が最高濃度で, 99.7~122.0μg/ml, 半減期は1,28~1,92時間, AUCは170~357μg・hr/mlであった。3生日, 5生日, 16~24生日の未熟児各1, 1, 4例に同量をOne shot静注で投与した時の血漿中濃度はいずれも投与後5分が最も高い濃度を示し, 各々113.0, 108.0, 112.0~148.0μg/ml, 半減期はそれぞれ3.85, 2.86, 1.70~2.25時間, AUCは各々493, 407, 310~361μg・hr/mlであった。
2. 血漿中濃度測定と同一の症例20mg/kg投与の新生児1例で採尿ができず, 尿中濃度と尿中回収率の測定はできなかつたが, 他の14例では測定でき, 20mg/kg投与の未熟児では1例に尿中濃度と尿中回収率だけ測定された。20mg/kgを投与した5生日と7生日の新生児各1例の尿中濃度は両者共に投与後0~2時間の2回目の尿が最高濃度で,それぞれ1,770, 2,300μg/ml, 投与後6時間までの尿中回収率は各々89.3, 82.0%であつた。5, 16, 17, 19生日の未熟児各1例に同量を投与した場合の尿中濃度は投与後0~2時間か2~4時間のいずれかの尿が最も高い濃度で, 417~2,260μg/ml, 投与後6時間までの尿中回収率は40.4~78.0%であった。40mg/kgを投与した17生日と24生日の新生児各1, 2例の尿中濃度は投与後0~2時間か2~4時間のいずれかの尿が最高濃度を示し, 1,800~4,170μg/ml, 投与後6時間までの尿中回収率は66.6~77.8%であつた。3, 5, 16~24生日の未熟児各1, 1, 4例に同量を投与した時の尿中濃度は投与後0~2, 2~4, 4~6時間のいずれかの尿が最も高い濃度で, それぞれ6,220, 2,750, 2,050~3,440μg/ml, 投与後6時間までの尿中回収率は各々38.0, 62.7, 66.1~83.7%であつた。
3. 細菌感染症44例の臨床効果は著効10例22.7%, 有効30例68.2%, やや有効1例2.3%, 無効3例6.8%で, 有効以上の有効率は90.9%を示し, 感染予防を目的とした52例ではすべてに予防効果が得られた。
4. 細菌学的効果はStaphylococcus aureus 9株, Haemophilus influenzae 2株, Escherichia coli 1株, 計12株で判定でき, H. influenzaeの1株が減少した以外はすべて陰性化し, 消失率は91.7%であつた。
5. 副作用は除外症例2例を加えた98例中1例1.0%に軽度の下痢が出現し, 本剤との関係は多分関連ありとされた。臨床検査値への影響では10%以上への好酸球増多が83例中1例1.2%, GOT単独とGOTとGPTの同時異常値がそれぞれ1例に出現し, 本剤との関係はいずれも関連があるかもしれないとされた。

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