1994 年 47 巻 5 号 p. 493-501
1982年7月より1993年6月の間の9大学病院およびその関連施設における術後感染症分離菌とその薬剤感受性の変遷について検討した。Staphyloceccus spp. の分離頻度は1985年度より年々増加傾向にあったが, これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の増加が中心であった。しかし, 最近の1年でのStaphylococcus spp. の分離率は低下し, Enterococcus spp. の分離率 (18.3%) についで第2番目の分離率 (15.7%) となった。Pseudomonas spp. は10~20%の分離頻度でほぼ横這いの状態であった。急激に増加したEnterococcus spp. の分離率は1988年度以後では約10~15%と低下したが, 最近の1年では再び増加した。嫌気性菌では, Bacteroides fragilis groupの分離率が高かったが, 年次的な変動は少なく8~15%であった。一般に抗菌剤が投与された後に分離される細菌は, Entervcoccus spp., Staphylococcus spp., Pseudomonas spp. などが多く, 嫌気性菌やEscherichia coli, Klebsiella spp. などは治療に良く反応すると考えられ, その分離頻度は低かった。