1994 年 47 巻 6 号 p. 561-574
アミノグリコシド抗生物質(AGs)の酵素学的耐性機構の研究と, それに基づく化学変換の研究によって合成したアルベカシン(ABK)は, ほとんどのAGs修飾酵素に安定で広範囲に優れた抗菌活性を示した。現在, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による肺炎と敗血症に限って臨床使用されている。僅かに分離されるABKに中等度耐性のMRSAによる不活性化の主体が, 2-OHの酵素的リン酸化であることを解明し, そのABKの2-OHをNH2に化学変換した誘導体と, さらにその5-OHを修飾した誘導体を種々合成し, 評価した。それらのうち, 2-Amino-5, 2-dideoxy-5-epiamino-ABKはABKより弱い腎毒性であったので, 低毒性の2-Amino-2-deoxy-ABKと共に抗MRSA薬として注目される化合物である。