The Japanese Journal of Antibiotics
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[最新の抗菌薬L] Cefcapene pivoxil
斎藤 篤
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1997 年 50 巻 6 号 p. 485-506

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抄録

Cefcapene pivoxil (CFPN-PI, S-1108) は塩野義製薬研究所で創製されたエステル型の経口用セフェム系抗生物質である。
主として外来で用いられる経口用抗生物質の重要な条件の一つとして, グラム陽性菌から陰性菌までの幅広い抗菌スペクトラムを有することが挙げられる。このような抗菌特性を有する化合物の創製を目標に, セフェム母核の7位および3位側鎖部分の化学修飾による合成, スクリーニングが行われ, その結果, 黄色ブドウ球菌, レンサ球菌などのグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を有する化合物としてCefcapene (CFPN) が創製された(Fig.1)。しかし, CFPNは経口吸収されないことから, 種々のエステル化が試みられ, そのなかで吸収性が最も良好なCFPNのピバロイルオキシメチルエステルであるCFPN-PI (Fig.2) が選択された。
本薬は腸管より吸収後腸管壁のエステラーゼにより脱エステル化され, CFPNとして循環血中に入り抗菌活性を示す。
本薬の一般臨床試験は平成元年7月より内科, 泌尿器科, 皮膚科で行われ, さらに翌年5月より外科, 産婦人科, 眼科, 耳鼻咽喉科, 歯科口腔外科領域を加え, 主として外来の各種感染症を対象に検討された。また, 小児については成人での安全性が確認されたのち, 平成3年1月より一般臨床試験が開始された。さらに, 慢性気道感染症, 複雑性尿路感染症および浅在性化膿性疾患を対象とした用量設定試験ののち, 平成3年7月より慢性気道感染症, 細菌性肺炎, 複雑性尿路感染症および浅在性化膿性疾患を対象に二重盲検比較試験が実施され, 本剤の有用性が確認された。なお, 一般臨床試験および用量設定試験の成績は第40回日本化学療法学会総会において, 新薬シンポジウムとして発表された。
以下に, その後に集積された成績を含め, CFPN-PIの概要について記述する。

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