1998 年 51 巻 2 号 p. 69-111
1996年6月から翌年5月までの間に全国10施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定した。尿路感染症患者から分離された菌の内訳は, グラム陽性菌が30.4%であり, その約38%がEnterococcus faecalis, 約17%がStaphylococcus aureusであった。グラム陰性菌は69.6%であり, その約48%がEscherichia coliであった。これらの菌に対する抗菌薬の効果をみるとStreptococcus agalactiaeに対してはMinocycline (MINO) を除き優れた抗菌力を示した。E. coliに対してもペニシリン系薬剤を除き全般的に抗菌力は強かったが, 95年度に比べるとセフェム系薬剤で若干低感受性株が多かった。またKlebsiella pneumoniaeに対してもペニシリン系薬剤を除き抗菌力は強かった。Staphylococcus epidermidisに対するセフェム系薬剤の抗菌力が95年度に低下したが, 96年度は回復しMIC90は4-16μg/mlであった。S.aureusに対してはMRSAも含みVancomycin (VCM) とArbekacin (ABK) は強い抗菌力を示したが, 他の薬剤の抗菌力は弱かった。Serratia marcescens及びPseudomonas aeruginosaに対しても全般的に抗菌力は弱かったが, キノロン系薬剤のP.aeruginosaに対する抗菌力が95年度に比べ強かった。Enterobacter cloacaeに対してはセフェム系で感受性株が95年度に比べ増加し, MIC50が4-8段階低下した。