Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人前障の研究
崔 秉植
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1957 年 11 巻 4 号 p. 483-502

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抄録
成人前障は唯灰白質から成る板状形成ではなく, 種々な形状の小灰白質塊の配列と其間を通る多数の線維群とから成り, 全体として篩状を呈する. 此状態は前障腹側部に於て特に著明である. 又前障は其外側面丈が島の回に応じて起伏状態を示すのではなく, 内側面も島皮質に平行的回転を示し, 外側部では島皮質との間に所々に灰白連結又は融合が見られるが, 内側面とレンズ核との間には何処にも斯る連結は認められない. そして前障は島皮質との間に於てのみ密接な関係を示す.
前障は頭側では島皮質の範囲を越して下前頭回眼窩部及び眼窩回まで及び, 背腹両端部も島の背腹両縁を僅かに越して弁蓋部に及んでいる. 但し尾側部のみは島皮質の範囲内に終っている. この様に前障は島皮質の範囲より多少広い範囲に拡っている. 然し前障は常に島皮質に平行して之を包囲の状態をとり, 反之レンズ核に対しては何等平行的関係を示さない.
最外包には前障と島との灰白質連結又は融合により屡々その痕跡的或は完全消失を示す場所も見られるが, 反之外包はその中に灰白質を所有せず, 厚い白質板としてレンズ核と前障とを明かに分けている. 唯島の前界辺で外包腹側部に板状の灰白質の存在が見られるが, 其存在理由は不明にされる.
前障は人胎児3ケ月初期に於て島の皮質板中層の内側縁に形成される. 線条体及び外包は反之少しくおくれて胎生3ケ月後期に現われる. 斯くして前障の内側は外包によって線条体から判然と分けられる. 最外包はこの時期には僅かに背腹両側に形成されるに過ぎず, 4ケ月胎児に於て始めて其形成も進み, 前障の外側は之によって島皮質から分離する.
以上前障の形態学的観察及び発生学的所見からすると前障は島皮質と甚だ密接な関係にある. 即ち前障はその根源を島皮質に発し, 発生分離後は独自の発達を行う. 故に前障は島皮質の1亜層として表わされるものではなく, 大脳核の1つに数えられる可き特殊核と見なさる可きである.
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© 国際組織細胞学会
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