抄録
硫化ソーダ溶液を長期間に亙って成熟と幼若の家兎に静注し, 組織に次のような変化が見られた.
硫化ソーダを静注された動物の動脉の中膜と軟骨の基質にトルイヂン青で異調染色する物質が大いに増加する. また動脉の中膜の弾性成分と軟骨の基質の過ヨード酸-Schiff 反応の強さが著しく高まる. 同時にアザン染色で動脉の中膜と軟骨の基質の分子的構造密度 (超構密度) が低下することが証明せられる.
また幼若動物での実験にて動脉の中膜の基質にイリゾールエヒト菫で染まる類脂質が著しく減ずるのが見られた.
なお, 硫化ソーダを静注された動物の脳組織では Golgi 氏法の変法 (重クロム-ホルマリン銀法) にて神経細胞と大膠細胞が対照に較べて数多く銀黒され, Rio-Hortega 氏稀突起膠細胞銀染法では稀突起膠細胞のみならず Hortega 細胞, 大膠細胞, 神経細胞が数多く銀黒される.
硫化ソーダを長期間静注されると, 皮下の結合組織の線維細胞が痩せ, 減少し, 線組球が増加し, 空胞を数多く持つようになる.