Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
組織化学的に見た胃粘膜表在細胞プロダクチン空胞 (藤江) の内容に就て. I
藤江 君夫山下 龍夫東条 一子山形 一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1957 年 13 巻 2 号 p. 175-183

詳細
抄録

藤江の提唱したヒスタミン様の胃壁ホルモン productin の本態を更に明確にしたいと考え, 胃粘膜表在細胞に含まれる productin 空胞の内容を組織化学的に決定出来ぬものかと試みたのが本篇である. 即ち空腹犬胃壁をフォルマリン固定し, 20-30μの凍結切片を作り, これに対して次の如き呈色反応を試みた. () 内は陽性または陰性の結果を示す.
1. ビウレット反応 (±), 2. キサントプロテイン反応 (+), 3. Millon 反応変法 (+弱), Benslny-Gersh の変法 (+弱), 4. Pauly のヂアゾ反応 (+), 5. Cole のアルデヒド反応 (-), 6. テトラゾニウム反応 (+), 7. 2,4-ヂニトロフルオロベンゼン前処理後テトラゾニウム反応 (+), 8. 過蟻酸前処理後テトラゾニウム反応 (+), 9. 塩化ベンゾイール前処理後テトラゾニウム反応 (-), 10. Totani の反応, 第1反応 (+), 第2反応 (黄金色の+), 11. Hanke-Koessler の反応 (桃黄色の+).
以上の結果, 胃粘膜表在細胞, 殊にその下半部にはイミダゾール核を有するアミノ酸 (ヒスチヂンの如き) か, これに類似の構造をもつ物質 (ヒスタミンの如き) が多量存在することが証明された. その位置は productin 空胞の存在する部位と一致し, 従って productin がヒスタミンか, これに近い物質であることや, productin が胃粘膜表在細胞から内分泌されることを間接的な実験成績から主張していた藤江の説はかなり真実に近いものと考えられる.

著者関連情報
© 国際組織細胞学会
次の記事
feedback
Top