抄録
人顔面神経核の上端は外旋神経核の下端より稍々上方に現われ, 0.3mm下降すると本核は背側, 中間及び腹側群の3群に分かれ, 更に下降すると神経細胞の激増により中間群は内側及び外側の2亜群に, 腹側群は内側, 中間及び外側の3亜群に分けられる. そして本核は下オリーブ核の上部の高さに来ると, 背側群, 中間群, 腹側群の順に消失する.
本核の運動神経細胞は40-60μ大で多数の神経突起を出す. 突起間は凹状を呈す. 軸索突起は細いが強染性で, 1細胞から1条, 稀に2条出る. 又2叉状分岐を示すものもある. 短突起は弱染性であるが, 甚だ太く, 次第に分枝に岐れ, 終末枝は尖鋭状に終る. 尚おこの細胞は1核性を一般とするが, 稀に2核性を示し, 細胞体内には発達良好な黄色色素の集合を見る.
人顔面神経核にも猫の場合と同様, 然しより小量に小型の植物神経細胞を見る. その多くは紡錐状を呈し, 比較的大型の核は細胞体の中心外に位する. この細胞は本質的には網様体に所属する. その他本核内には猫に於ける様に円味のある大型細胞も見られるが, 果して知覚性であるかは分らない.
顔面神経核に対する外来線維として第1に三叉神経脊髄路からの知覚線維がある. 之はその腹側部から内側方に向う微細枝と背側部から植物線維を伴うものとから成る. 第2は聴神経線維で, 之は前者の腹側方を内側に走り顔面神経核の腹側部に入る.
第3は錐体からの運動線維である. 之は内側部の外弓状線維に入り, 縫線で他側のものと交叉し, 然る後他側の内弓状線維に移行して顔面神経核に到る. 尚お錐体から外弓状線維に入り, 外側方に進み, 同側の顔面神経核に到る運動線維も存在する様である.
以上各種外来線維は本核内に来ても殆んど分岐吻合を示さない事は甚だ興味深いが, とその終末様式が洵に不明にされる事は甚だ遺憾であった.