抄録
体内にて遊離されたヒスタミンが胃腺細胞分泌機能に及ぼす影響を追究せんとして, ヒスタミン遊離物質 (塩酸シノメニン, トリプシン, デキストラン) を皮下注射した.
胃腺主細胞では注射後分泌顆粒の新生及びその放出が認められ, 分泌機能的動きはヒスタミンを皮下注射した場合と相似することが知られ, またヒスタミン遊離物質の作用は必ずしもすべて同じでないことが本細胞の分泌機能像からも推察出来た. しかしこの時注目すべきは, ヒスタミン注射によっては見られなかった胃粘膜表在細胞からのプロダクチン空胞放出が顕著で, 胃腺主細胞分泌機能の動きが遊離されたヒスタミン以外にこのプロダクチンに基因すると考えられる点が多いことである. 従って胃粘膜表在細胞の含有する胃壁ホルモン「プロダクチン」はヒスタミン遊離物質によって放出される物質であると考えられ, プロダクチンとヒスタミンの類似性を裏付ける1つの新しい事実が知られた.
胃腺壁細胞もまた注射後活発な機能営為を示すが, 胃腺主細胞のそれに比すると特筆すべき特徴がない.
血中ヒスタミンを定量すると, 塩酸シノメニン注射例が最も多く, デキストラン注射例が最も少い. しかし胃腺主細胞分泌機能像と対照すると, 強力な抗ヒスタミン作用が働いているであろうことが屡々推察された.