抄録
孵化後20-30日の雌雛 (白色レグホン種) を用いて, 0.25-0.5単位のインシュリン皮下注射の1-3時間後の副腎髄質の変化を電子顕微鏡を用いて観察した.
1. 正常の髄質細胞の分泌顆粒は真中のオスミウム好性の部分の周囲に白色の量を隔てて一重の膜を被っているものが多いが, イスシュリン注射後にはオスミウム好性顆粒の大きさ, 数, 電子的密度が著明に減少する. 一方, その周囲の白色暈は大きく, 円くなる. 暈が大きくなり中の顆粒のなくなったものは空胞状を呈する. 時に細胞質の大部分がこの空洞で占められているものが見られる.
2. ミトコンドリアは正常では桿状のものが多いが, インシュリン注射後には円形を呈し, クリスタの配列は乱れ, 時に空胞状を呈する.
3. 血管腔の電子的密度は高くなり, 又その周囲にある内皮及び洞周囲隙 (perisinusoidal space) は菲薄化する.
4. 髄質細胞間に, 所々に大きく, 電子的密度の低い細胞間隙が出現する.
5. これらはアドレナリンの分泌促進のための細胞の変化と考えられる.