Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
顔面神経核及び滑車神経核の比較解剖学的研究
島田 広重
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1960 年 19 巻 1 号 p. 131-143

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抄録

92種の哺乳類, 7種の鳥類及び13種の爬虫類, 総計112種動物脳の Pal-carmine 染色, 横断連続切片標本を用いて研究した.
先づ動眼神経核と滑車神経核の位置的相互関係を見るに, 人では両核は僅かに離れ, 猿目, 擬猴目では両核が全く融合するか或は密接せる者が多く, 食肉目ではかなり離れる場合が大部分を占め, 有蹄目, 囓歯目では再び密着する者が多くなり, 更に鯨目, 皮翼目, 翼手目, 食虫目及び貧歯目で両者間に細胞の無い明瞭な間隔を有する者が多くなる. 有袋目では又融合或は密接する者が多く, 単孔目では全種でかなり離れている. 鳥類と爬虫類では更に又融合或は密着する者が多い.
以上の所見を検討した結果, 私は Kappers の意見とは反し, Koelliker の個体発生学的研究と相俟って, 両核が融合するか或は密接している状態がより原初的状態で, 両核が相離れている方がより分化発達せる状態であると考える.
又滑車神経核の分断現象は全材料動物中, 僅かに17種で見られるだけで, 而も哺乳類に限られ又各目に広汎に亘り散発的に見られる. そこで私は此現象には特別の意義は無いものと考える.
更に私は各種動物に就き錐体路の相対的発達度合を計測し, 之に対する滑車神経核の位置の移動の有無或は相対的変化を調べてみた. その結果, 錐体路の発達如何に依って滑車神経核の位置が移動するとか或は変化するという事実は認める事は出来ず, Kappers の所謂 neurobiotaxis 説は是認出来ない事が明かにされた.

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© 国際組織細胞学会
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