Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
初生猫上唇の知覚神経分布に就て
芦野 胤夫深瀬 和夫関口 澄雄末永 毅
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1960 年 19 巻 2 号 p. 189-202

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抄録
初生猫の上唇も外皮部, 移行部 (外帯と内帯) と粘膜部に分けられるが, その構造には動物差による多少の特異性を見る. 尚お正中部の粘膜部には縦走性のヒダの形成を見る.
外皮部は密生する小毛根の外に洞髮を含むを以て知覚性毛髮線維は甚だ豊富であり, 且つ毛嚢頸内に形成されるその叢状及び柵状終末も可なり複雑に構成され, 且つ人や猿の場合と同様, この終末に由来する第2次叢状終が毛根上部に形成される. 又この部の表皮下には小乳頭の形成を見るから, その中には稍々複雑な分岐性終末が形成される. 尚お洞髮周囲に終る知覚終末の終末枝の1部は猿の場合と同様上皮性外毛根鞘内に入って終る.
上唇移行部特に正中部寄りでは上皮に対する乳頭形成が著明, 従って良好な発達の固有膜神経叢は多くの知覚線維を含む.
移行部外帯では乳頭内の非分岐性及び分岐性知覚終末の外, 上皮内線維も発見される. 後者は屡々上皮表層に進み専ら尖鋭状に終る. 尚お小量ではあるが, 単純性終末棍の乳頭内形成を見る. 移行部内帯には外帯に於けるよりもより多くの知覚線維が見られ, その終末は外帯に於けると略々同様に構成されるが, 上皮内線維は可なり特徴的で, 多くは微細線維から成り, その先端は上皮表層に迄達して小釦状に終る. 又正中部寄りの内帯ではこの上皮内線維から甚だ細い終末枝が現われ, 網状終末に移行するのが認められる.
上唇粘膜部のヒダ以外の所では移行部内帯の場合よりも知覚線維の分布は劣勢, その終末には上皮下に形成される僅かの単純性分岐性終末と上皮内線維とが挙げられる. 後者は移行部内帯に見られたものに類似, 一般に非分岐性線維で表わされ, 上皮表層に小釦状に終る.
粘膜ヒダ特にその口腔面では乳頭も発達良好, 従って著明な固有膜神経叢に由来する知覚線維も多量に見られ, 乳頭内には稍々複雑な分岐性終末の外, 2-3知覚線維を容れる大型の終末根の形成を見る. 然しここでは上皮内線維は見られない. ヒダの外側溝に面する上皮は甚だ背が高く, この中には可なり太い上皮内線維が認められる. 之は屡々2-3分枝に岐れ, その先端は上皮中層内に弱い膨隆を以て又は鈍状に終る.
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© 国際組織細胞学会
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