Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
虫垂炎に於ける虫垂間膜中皮細胞の変化
増田 正敏
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1951 年 2 巻 3 号 p. 325-332

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抄録
各種虫垂炎に於て虫垂間膜に鍍銀法を行ひ, また時に応じてヘマトキシリンで核染色をも施し, その中皮細胞の外形と細胞間隙の変化を観察した. 一般に虫垂間膜の変化は虫垂のそれに遅れて現はれ, また虫垂に近いほど烈しい. 虫垂自身の炎症が軽度な場合には, 中皮細胞は典型的な波状の境界線を示し, 細胞間には散在性に円い点状物質と所謂小孔が見られる以外に変化はないが, 炎症が次第に烈しくなると, 中皮細胞はその結合を緩め, 次第に類円となり, 遂に所々で剥離が起り, 細胞間には黒染する滲出物質が多くなつて来る. 更に炎症が烈しくなれば, 多量の滲出物質の沈着の間に中皮細胞の完全な円形化と剥離が見られる. 併し剥離した細胞の運命は私共の標本では確められない.
次に虫垂炎が治癒に向ひ, 又慢性になると, 中皮細胞の境界線は次第に細く平滑になつて来るが, 全治しない間は波状のモザイク摸樣を示さない. 全治後何程の時日の後に波状境界線が現はれるかは今後の問題である. 又しばしば中皮細胞の形は不規則で大小不揃となり, その小なるものは單核球と組織球に近似して来るが, このことは初期には決して見られず, 少くとも10日間以上の経過を必要とする. 尚ほこれ等の細胞はその形と周りの細胞との位置的関係から考へて, 少くとも大部分は中皮細胞の変化したものであるらしい.
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© 国際組織細胞学会
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