抄録
X線照射が消化系器官に及ぼす影響を検する研究の一部として膵に及ぼす影響を研究した. ラッテを用い500γを1回に, 及び1日100γを5日連続して上腹部並に下腹-大腿部に照射し, 照射後1時間を経て給食した. 而して給食直前から給食後6時間に亘って段階的に取材観察した. 得た結果は以下の如くである.
1. 膵細胞に於けるチモーゲン顆粒新生機能は照射量, 照射部位に関係なく著しく低下する.
2. チモーゲン顆粒放出機能は上腹部照射では甚だ低下するが, 下腹-大腿部照射では前者よりも活発である. 照射量との関係は見出し難い.
3. X線宿酔予防剤を照射前に注射しておくと, 膵細胞分泌機能はあまり著明には変化しない. チモーゲン顆粒新生機能障害の防止には thioctic acid 及び5-oxy-anthranilic acid が特に有効であり, チモーゲン顆粒放出機能障害の防止には thioctic acid が特に有効であると考えられる.
4. X線照射例では2核性膵細胞が増数する. 切片標本にて数えた結果では上腹部照射で正常の6-8.5倍, 下腹-大腿部照射で4倍, X線宿酔予防剤注射後上腹部照射で1.6-2.8倍で, 分泌機能的活動が正常に近づくに従って減少する傾向が見出される.