Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
電子鏡検によって示された膀胱移行上皮の微細構造とその機能的意義
黒住 一昌山岸 三男山本 輝通
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1961 年 21 巻 2 号 p. 155-183

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抄録
キクガシラコウモリとカイウサギの膀胱移行上皮とその固有層を電子顕微鏡で観察した.
移行上皮は表層, 中層及び基底層の3層から成る. 表層細胞 (蓋細胞) の自由表面には microvilli はなく, 種々の深さの切痕が多数認められる. この切痕は, 膀胱壁が伸展された状態では, その数と深さを著明に減ずる. 蓋細胞の表層には光学顕微鏡で知られた殼皮に相当する特殊な細胞質層があり, グリコゲンと思われる多数の微細暗調顆粒とかなりの数の空胞を含む. この層の直下に多数の糸粒体が集合する傾向が認められる. 蓋細胞に特異的に現れる大小の空胞は恰も空虚のように見えるものと, いろいろな顆粒状又は小胞状の粒子を含むものとがあり, ウサギの膀胱に脂肪乳剤を注入した実験の結果から, この空胞が尿中の脂質を pinocytosis の機構によって吸収するであろうことが判明した. 水及び電解質も同様にして移行上皮に吸収されるであろう. 蓋細胞の細胞質には多数の張微原線維束が含まれる.
中層の細胞にも空胞と脂肪滴が見られるが, この層の細胞の中, 表層の直下に相当する部分に特に集合する傾向があり, 基底層の細胞には含まれない. 従って脂肪或は他の吸収された物質は上皮中層の高さで, 狭い細胞間隙に放出され, 基底層を通過する際には細胞間隙を通るものと推定される. 基底細胞は屡々暗調に見え, 遊離RNA顆粒と思われる微細暗調顆粒を多数含む.
ウサギの移行上皮の蓋細胞外側縁には, 短い間隔をもって周期的に並ぶ多数の desmosomes が見られ, これは上皮の伸展に抗する有力な抵抗を与えるものと思われる. 細胞境界の複雑に折れたたまれた形質膜は, 膀胱壁の伸展及び収縮による細胞の輪郭の著明な変化に関連があるのであろう.
1枚の薄い基底膜が移行上皮を固有層から境する. 上皮下毛細血管の壁は薄く扁平化した内皮細胞の細胞質とその外側の基底膜から成る. 内皮細胞の薄膜状の細胞質を通ずる小孔が時として観察され, この小孔は膀胱内腔から吸収された物質を血行へ移行させるのに関連があるかもしれない.
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© 国際組織細胞学会
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