Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
兎の直腸と肛門の神経分布
馬場 義男六角 謙渡辺 純夫
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1961 年 21 巻 3 号 p. 355-367

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抄録

兎の直腸下部に向う神経束は多くの植物線維の外に猫や犬に於けると略ぼ同様, 人に於けるよりはより多くの有髄性知覚線を含む. 植物線維は Auerbach 神経叢及び Meissner 神経叢と密接な関係を示し, その終末は終網 (Stöhr) で表わされる. 尚お両神経叢内の神経節の発達は甚だ劣勢, 神経細胞は専ら幼若型に所属する. 知覚線維は粘膜筋膜又は固有膜の中に入り, 非分岐性及び単純性分岐性終末に終る. その終末線維は腸隠窩間を上昇する事は少く, 多くはその基底部に近く終る.
兎の直腸から肛門に移行すると平滑筋層の形成が急に劣勢となるため Meissner 及 Auerbach 神経叢も殆んど見られず, 反之甚だ多量の知覚線維を含む粘膜下膜或は固有膜神経叢の形成を見る. 知覚線維の中で極めて太い有髄線維の軸索は終末に近づくと Ranvier 交輪で急に細まって二叉状分岐を再度にわたって行い, 従って可なり広い範囲に拡散終止する事が出来る.
非角化性の厚い重層扁平上皮で包まれる肛門の粘膜帯に進む知覚線維の終末は専ら上皮下に構成される分岐性終末で表わされ, 中には甚だ複雑性のものも見られる. その終末枝は屡々著明な太さの変化と特有な迂曲走行とで特徴的であり, 然し上皮内線維に移行する事は甚だ稀である. 尚おこの部には人及び2-3動物に於けると異って糸球状小体は認められない.
兎の肛門外皮部には一般有毛外皮に於けるよりも知覚線維が遙かに多い. この部の毛嚢に関係して終る知覚線維は比較的数も少なく, 又その終末も一般に単純に構成される. 反之狭い乳頭層内には多くの知覚線維の進入を見, その終末も一般に複雑性分岐性終末で表わされる. 尚お表皮の中に多少入り込んで終るに非ずやと思われる終末枝も稀ならず認められた.

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© 国際組織細胞学会
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