Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
小脳胎生顆粒細胞の研究
I. 組織培養にての同定
水野 昇金 承業岡本 道雄
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1962 年 23 巻 2 号 p. 185-211

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抄録
1. 小脳胎生顆粒層または外顆粒層の細胞の運命に関しては従来より多くの研究がなされているが, 諸家の見解は互いに相違し, 一致をみておらない. 我々はこの問題を組織培養法により追求するために, 先ず, 仔猫乃至仔犬の小脳皮質の培養時に出現する細胞の中に, 外顆粒層の細胞を同定しようと試みた.
2. 外顆粒層の発育良好な時期, 主として生後3週間以内の仔猫乃至仔犬小脳皮質を培養した時の最も特徴的な像は多数の小形細胞の出現である. この時期の仔猫小脳皮質に多数存在する小形細胞としては, 外顆粒細胞のほかに, 内顆粒細胞, 稀突起膠細胞, 小皮質細胞等が考えられるが, 次の如き所見から, 培養時に出現する小形細胞のうちの一群の細胞をもって外顆粒層に由来するものと考えた.
a) 新鮮な仔猫の小脳皮質を塩類溶液と共にカバーグラスとスライドグラスの間に置き, これをおしつぶして外顆粒層を観察すると, 培養小形細胞ときわめて類似した位相差像がみられる.
b) 外顆粒層の消失している時期の猫の小脳皮質の培養では, 特徴的な小形細胞は出現しない.
c) 小脳皮質以外の脳部位の培養時にも, 時に小形細胞が多数出現することがあるが, これらの小形細胞の大部分は稀突起膠細胞乃至未分化の幼若細胞と考えられ, 小脳皮質培養時に出現する一群の特徴的な小形細胞とは異なった像を呈する.
d) 小脳皮質培養時に出現する小形細胞の中には, 従来発表せられている外顆粒細胞の鍍銀像とよく一致する形態を有するものが多い.
3. 我々が外顆粒層由来のものと同定した細胞と稀突起膠細胞との鑑別, 本細胞と他の脳部位に存在する未分化細胞との関係, 更に培養時の内顆粒細胞について考察を試みた.
4. 本研究の段階では外顆粒細胞の運命についてはなお不明であって, これについては今後の研究に俟たねばならない.
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© 国際組織細胞学会
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