抄録
8ケ月人胎児胸郭内で肋骨及び胸骨の骨膜周辺のみならず, 肋軟骨の軟骨膜周辺にも小体様終末が甚だ多数に発見された. その大多数は Golgi-Mazzomi 氏小体であり, これに反し Pacini 氏小体は極めて少数に見られたに過ぎない.
Pacini 氏小体は小型のものが多く, 更に2型に分けられた. 1は細長い内棍内に非分岐性に終わる知覚線維を見るが, 他は巾広く膨隆した内棍内に単純な分岐を行なって終わる分岐性終末を含む.
Golgi-Mazzoni 氏小体の中で, 小型のものは一般に骨膜や軟骨膜に接して存するが, 大型のものはその周辺の結合織や筋組織内に形成される. 本小体も概ね2型に分けられる. 第I型では典型的な広い透明層で包まれる細長い内棍内に非分岐性に終わる知覚線維が見られ, 第II型では狭い透明層で包囲される膨大した内棍内に単純性分岐性知覚終末が証明される.
小型の Golgi-Mazzoni 氏小体の2-4集合が可なり屡々骨膜や軟骨膜に接して発見された. その各小体に向かう知覚線維は一般に細い線維から成り, 多くは夫々別箇の線維で表わされるが, 時には同一幹線維の分枝から成る.
以上小体様終末のほか, 強靱な感じを与える単純性分岐性終末も骨膜や軟骨膜周囲に発見される. 但しその数は僅少であった.
肋間筋に於いては腱紡錐が驚くほど多数に証明された. これに反し筋紡錐は殆んど見られない. この腱紡錐の中心核集合部に終わる分岐性知覚終末の発達も甚だ良好であった. また興味深いことに, 2つの腱紡錐の知覚終末が同一知覚線維に由来するものが稀ならず発見された.