抄録
フォルマリン固定, パラフィン切片のラッテ胃に対して蛋白質, アミノ酸に関係ある呈色反応を組織化学的方法で試み, 胃腺主細胞を観察した, フェノール核, イミダゾール核に関係ある反応 (Pauly のヂアゾ反応, Hanke-Koessler 反応, Millon 反応, テトラゾニウム反応及び封鎖処置後のテトラゾニウム反応) は陽性, インドール核に関係する反応 (Cole のアルデヒド反応, Romieu 反応) 及びSS, SH基に関する反応 (Pearse による過蟻酸-Schiff 法) は陰性の結果を示す.
陽性結果を示す反応を用い, 胃腺主細胞分泌機能の活動時期別に観察したところ, 以下の如き所見を得た.
1. 空腹時, 即ち分泌機能休止期に於いては胞体上半にフェノール核物質 (チロジン) が証明される. 給食して胞体上半部に分泌顆粒が生成されると, フェノール核物質は証明されなくなり, 生成された分泌顆粒にイミダゾール核物質 (ヒスチヂン) が証明される. 分泌空胞はいずれの反応にも呈色しない.
2. 空腹時に塩酸ヒスタミンを皮下注射すると, 主細胞には旺盛な分泌顆粒生成が見られるが, この時胞体上半部のフェノール核物質の消失がなくフェノール核物質の証明される部位にイミダゾール核物質たる分泌顆粒が生成され, 両物質が同時に共存することが証明される.