抄録
成鶏の膵臓を1%オスミウム酸 (燐酸緩衝) 固定, アルコール脱水, エポン包理して, ランゲルハンス島のD細胞を電子顕微鏡で観察した.
D-細胞は毛細血管にそって並んでおり, 多くは円柱状である. 細胞質には他の島細胞と同じく粗面小胞体, 小胞, ゴルジ装置, 糸粒体, multivesicular body, dense body, リボゾームなどが見うれる. D細胞の特異とする点は, 細胞質に電子密度の低い円形顆粒 (直径350-550mμのものが多い) 存在することである. このD顆粒には一枚の限界膜内に, 一般に物質が密につまっている. D顆粒は細胞内に小数が点在することもあり, おびただしく密集することもある. これらの顆粒はゴルジ空胞内で形成され, 顆粒は細胞内を移動して, 主として血管側の細胞質に貯えられ, ついに細胞外に emiocytosis (eruptocrine) によって放出される. すなわち, D細胞は secretory cycle を示す. 今までD細胞を分泌細胞であろうと推測していたことが, 微細構造的に確認された.
まったく稀にD顆粒に酷似の顆粒と典型的なA顆粒が, 一つの細胞中に共存することがある. ほとんどの顆粒が間隙によって限界膜に隔てられたA顆粒の特徴をもつ所から, このような細胞はA細胞と思われる.