Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
海馬領域にふくまれる亜鉛のジチゾン投与後における量的変動
大塚 長康井端 泰彦
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1966 年 27 巻 1-5 号 p. 419-424

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抄録
マウスの海馬領域 (海馬と歯状回) にふくまれる亜鉛について, ジチゾン投与による顕著な量的変化を 硫化銀法 (TIMM 1958) を用いて観察した.
海馬領域は 細胞構築学的に区分される一定の分野に一致した 大量の亜鉛をふくんでいる. すなわち, ROSE の分類による海馬のh3, h4, h5野の Stratum radiatum の Stratum pyramidale に接する帯状領域および歯状回の Stratum multiforme は, ともに硫化銀法によって強陽性に反応する亜鉛を含有している.
ジチゾン (200mg/kg) を腹腔内に投与すると, 1) 15分後には, 歯状回の Stratum multiforme はなお強陽性反応を呈しているが, h3, h4およびh5野の Stratum radiatum では反応は弱くなり, 2) 30分後には, 歯状回の Stratum multiforme のみが弱陽性反応を呈する以外, 海馬全領域における反応はまったく陰性となった. 3) 1∼4時間後には, 歯状回もまた陰性となり, 海馬領域における硫化銀反応は完全に消失する. 4) 5時間後になると反応は回復し, 正常時の所見に再びもどる.
なお, 海馬領域に局在する亜鉛に対するジチゾンの影響について, その機序を膵島B細胞における亜鉛-ジチゾンの反応様式と比較して考察した.
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© 国際組織細胞学会
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