抄録
ヒト3ケ月胎児の足の運動器に小体様終末が多数発見された. その多くは Golgi-Mazzoni 小体であり, Pacini 小体はより遙かに少なかった.
Pacini 小体は小型で, 内棍は細いが, 時には膨隆し, その中の特殊核も発育未熟, 内棍を包む結合織層板は3-4層から成る. 内棍に進む1条の比較的太い知覚線維は分岐することなく内棍の遠位極に近く鈍状に終る. 共通性層板内におおむね2ケの小体を含む複合性 Pacini 小体が, とくに足の背側部に発見されたことは興味深い.
3ケ月胎児としては発達良好な Golgi-Mazzoni 小体が運動器の諸所, とくに中足骨と種子骨の周辺に, しかもかなり多数に証明された. その形は円筒状, そして小型, 大型の両型に分けられた.
小型のものでは, 内棍は1列性の特殊核を含み, 広い透明層で包まれる. さらにその周囲に結合織細胞の1列性配列の輪状層と最外層の縦層がある. 内棍に入る1条の太い知覚線維はその長軸に沿って前進し, 分岐することなく鈍状に終る. 大型のものでは, 内棍は膨隆して特殊核に富むが, 透明層は発達劣勢, 内棍に進む知覚線維は中等径を示し, 分岐することなく尖鋭状または鈍状に終る.
Golgi-Mazzoni 小体の集団的存在が足運動器の諸所, とくに中足骨と種子骨に沿って多数発見された. 各小体に進む知覚線維は大径または中等径, 時には小径を示し, それぞれ別箇の線維に由来するが, まれには同一幹線維からの分枝から成る. この集団は2-4, 時には5ケの小体の集まりを示し, かつ2型に分けられる. すなわち一は小型小体, 他は大型小体で構成される.
そのほか, 足の諸骨の骨膜には未だ発達不良の単純性分岐性終末が少量に, しかし中足骨の骨膜にはしばしば骨膜内層にまで達する細い分枝から成る複雑性分岐性終末が諸所に発見された. ただし強力な大径線維から成り骨膜に特有と考えられて来た分岐性終末はこの足骨では証明されなかった.
努力的検索にもかかわらず, 3ケ月胎児の足筋内には筋紡錐も腱紡錐も発見されなかった.