抄録
消化管上皮構造を比較解剖学的に研究する目的でシマヘビ腸粘膜を電顕的に観察した. 粘膜上皮に円柱細胞と杯細胞と好銀細胞とを区別できた. 中腸の円柱細胞が栄養物の吸収に主役を演じていることは疑いない. 終腸では円柱細胞の微絨毛の丈は低く, 遊離縁近くの細胞質内に顆粒の集積を認めた. 杯細胞は中腸ではひだの山の部分に多く, 終腸ではひだのどの部分にも多数認められた. 好銀細胞のゴルジ装置および粗面小胞体の内腔には, ときどき電子密度の高い物質がつまっており, 分泌顆粒の形成にゴルジ装置と粗面小胞体が重要な役割をはたすと考えられた. シマヘビの腸上皮に最も特徴的なことは, 特異な封入体を含む巨大なミトコンドリアが出現することである. このものの機能的意義は不明だが, 腸上皮を構成する3種類の細胞のいずれにも見出された. 粘膜固有層の毛細血管内皮細胞にいわゆる胞体を貫く小孔を観察できなかつたことは興味がある. 腸上皮の核内に特異な小胞の集団を認めたが, これは30匹観察したうちのただ1匹のシマヘビにしか見出されなかつた.