抄録
イヌ, ネコ, ウサギ, ラット, マウス, モルモットの旁小胞細胞は DAVENPORT (1930) の渡銀法を若干改変すると, 黒染する微細顆粒の充満する細胞として染色された. この方法は今までこの細胞の渡銀法として用いられた Cajal 法に比べ, Bouin, フォルマリン, Carnoy などで固定することができるので細胞質の保存が格段に良好で, また他の染色法との組合わせにも便利であり, 染色時間もはるかに短くてよい.
小犬にCaCl2 50mg/kgとビタミンD2 10万IUを2.5時間間隔で3回投与すると, 好銀顆粒は著しく減少し, 細胞集団の周辺部にかたよる. なかには完全に脱顆粒したものも見られたが, これらは渡銀切片を脱色後, ヘマトキシンエオジンで再染すこるとにより, 核の形態より旁小胞細胞であることが確認された.
旁小胞細胞の数は本渡銀法でしらべると, 従来考えられていたよりもはるかに多い.
(小胞細胞100個に対しイヌでは30∼90個, ラットで30個)
旁小胞細胞は鰓後体 (ultimobranchial body) から生ずるという説があるが, その遺残と見られる嚢胞の上皮細胞は渡銀によって黒染されなかった.