抄録
1. 自律神経終末一般に関する最近までの電子顕微鏡による研究成果を概観し, これらの成果と HILLARP (1959, 1960) が提唱した“autonomic ground plexus”の概念との関係につき考察した.
2. 脊椎動物心臓におけるアドレナリン作動性, コリン作動性神経終末の微細構造およびそれぞれの神経終末の分布状況を概説した. 両棲類, 鳥類, 哺乳類の心筋での観察から, この2種の神経突起がその末梢部位において, 対をなして走行したり, あるいは同一のシュワン細胞質を共有して走行するという注目すべき事実が示されている.
3. 下等および高等脊椎動物の心臓において, その pacemaker 部位にとくに密なる神経終末の分布が認められている.
4. 自律神経終末装置のうち知覚性成分については, いまだその微細構造が知られていない. しかしモルモット肺動脈弁結合織およびヒト心筋組織において今までに見出されている, 異常に多量の小型糸粒体を含有する神経突起が, 心臓知覚線維の末梢部分である可能性が論じられた.