Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
出産前後におけるラット下垂体前葉の細胞発生の光顕的, 電顕的研究
吉村 不二夫春宮 寛治木山 碵子
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1970 年 31 巻 3-4 号 p. 333-369

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抄録
胎生15日にラトケ氏嚢から発芽した未分化前葉は単一型の無顆粒原始細胞から構成されている. 発生の進むにつれてこの細胞に顆粒形成がはじまる. 胎生期には主として塩基好性細胞軸の発生が進み, 酸好性細胞軸の発生はおくれる. 妊娠末期には塩基好性細胞がよく発達し, 雄ではゴナドトロープの形となり, 時を同じくして精巣に間細胞が一過性に豊富に出現する.
出産後は雄では塩基好性細胞の分化は停止し, 一方雌雄とも酸好性細胞軸の分化が急速に進み, 5日令までに明瞭なアルファー顆粒を豊富に含む, 幼若な酸好性細胞が多数出現する. 胎生期の細胞分化は雌は雄におくれているが, 出産後は急速に追いつく. 雄ではゴナドトロープ型細胞はなくなり, すべてサイロトロープ型となり, 雌では雄と同じ頻度でサイロトロープが現われる. 甲状腺は出産前後にかけて漸進的に分化する. 一方雄では3日令で完全に副腎の永久性皮質が胎児性皮質にとってかわるようであるから, 多量のACTHの放出が想像される.
原始前葉細胞は, 顆粒形成が進行するため, 胎生の後期には少くなり, 生後もわずかに残る. この細胞および未分明細胞の段階で細胞分裂がおこるが, 一度顆粒を豊富に含有するに至った細胞ではおこらないようである. 末梢の標的器官が発生を続ける限り, 原始細胞は完成した色素嫌性細胞になることはない. この発生学的研究から原始前葉細胞は酸好性と塩基好性細胞の2軸にそって分化することが推定された.
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© 国際組織細胞学会
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