抄録
開腹手術時に3人の患者より採取した十二指腸粘膜を電子顕微鏡下に観察して以下にのべる結果を得た.
1. 全例で, 腸腺の深部及び十二指腸腺の導管に5型の内分泌細胞が見出された. 1) 腸クロム親和性 (EC) 細胞は暗調の, 複雑な形の分泌顆粒をもつ 2) 第2型の内分泌細胞は大型で球型の顆粒をもつ 3) 第3型は顆粒が小型で核の周辺に線維束の集合がみられる. 顆粒実質が二重構造を示す点はランゲルハンス島のA細胞に似る. 4) 第4型は第3型と似た大きさの顆粒をもつ. この細胞はキンチャク型で内腔に突出した部分に長い微絨毛がみられるのを特徴とする. 5) 腸D細胞の顆粒はランゲルハンス島のD細胞のそれに類似している.
2. これら5型の内分泌細胞はいずれも腸腺または導管の内腔に突出しており, そこには微絨毛がみられる. 内分泌細胞の内腔への突出部がpHの変化などの内腔の情報を感受するための構造である可能性が考察された.