1971 年 33 巻 3 号 p. 199-208
成熟マウスの視床下部を電子顕微鏡により検索した. 観察したすべての神経核で, 神経細胞はしばしば胞体内に核小体様包括体を含んでいた. これらの包括体は核内核小体と形態学的に同様の構成成分から成るので, それらは核に由来すると考えられる. 核内で固有の核小体に隣接して核小体物質から成ると思われる集塊がしばしば核膜に付着していたり, 時に核の突出部に現われたりした. これらのものを本論文では仮に副核小体と命名した. さらに胞体中で, 核に近く副核小体に外観が極めてよく似た包括体で, 核膜から由来したと信ぜられる二重膜に包まれているものが見られた. これらの結果から核小体物質の核外脱出の過程として, 核小体物質が核膜の二重膜に包まれたまま胞体中へ直接に移動することが, マウスの視床下部神経細胞で可能であろうと考えられる.