Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
老カニクイサルの毛様体筋の微細構造, とくに特殊封入体について
瀬戸口 孝夫
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1972 年 34 巻 3 号 p. 215-229

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抄録

健康な老カニクイサル1頭の毛様体筋の微細構造を 電子顕微鏡で検索した. 細胞形質内には, 大型の膨化した糸粒体, 嵌合した糸粒体, 種々の型のミエリン様像, 高電子密度の粗大膜構造物, リゾゾーム様小体, 円形の脂質様小体, リゾゾーム様小体から脂質様小体への移行型, リポフスチン色素, 滑面小胞体の渦巻状構造物, coated vesicle, 多胞体が ときに観察された.
毛様体筋において このような所見は, サル属では従来の記載をみないのみならず, そのあるものは 他の如何なる種属でも報告されていない. これらの封入体の多くは, リポフスチン色素および関係小体の存在との関連の下に, おそらく細胞の老化に関与すると考えられるが, 渦巻状構造物は毛様体筋の老化現象に特有な他の型を示すか, または毛様体筋の未知の病的変化を示すものであろう. これらの種々の封入体のうち, とくにリポフスチン色素, 脂質様小体, 渦巻状構造物, 高電子密度の粗大膜構造物およびミエリン様像の発生または細胞学的意義についても論じた.

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© 国際組織細胞学会
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