Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
カエル下垂体前葉細胞の電子顕微鏡的研究とくにACTH細胞の同定について
新川 康裕中井 康光
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 34 巻 3 号 p. 293-308

詳細
抄録

トノサマガエル下垂体のACTH細胞同定の目的で, 正常, 副腎摘出, および メトピロン投与後の前葉を電子顕微鏡で観察した.
正常前葉細胞は微細構造上 次の7種類 (1∼7型) の細胞に分類できる.
1型: 非常に多数の球形分泌顆粒 (直径600∼1,200mμ) と小胞状の粗面小胞体をもつ大型細胞.
2型: 多くの球形分泌顆粒 (直径400∼600mμ) と小胞状の粗面小胞体をもつ中型細胞.
3型: 少数の有芯球形の分泌顆粒 (直径200∼350mμ) と短い層板状の粗面小胞体をもち, ゴルジ装置の発達のよい細胞質突起の多い多角形中型細胞.
4型: 多くの球形分泌顆粒 (直径150∼250mμ) と層板状および小胞状の粗面小胞体をもつ中型細胞.
5型: 多くの電子密度の低い桿状ないし球形分泌顆粒 (直径300∼1200×300∼600mμ) と小胞状の粗面小胞体をもつ大型細胞.
6型: 中等量の桿状ないし球形分泌顆粒 (直径300∼400×100∼300mμ) と, 層板状の粗面小胞体をもつ中型細胞.
7型: 分泌顆粒を全く含まず細胞質のごく少ない突起の多い, 類濾胞を形成している多角形の細胞.
副腎を摘出すると 3型細胞のみに顕著な変化が見られた. すなわち 血管周囲にのばしている細胞質突起の増大, 分泌顆粒の著明な減少, 桿状の電子密度の低い小胞 (vesicles) の増加などが認められた. そして 粗面小胞体は著明に発達し, その内腔が拡大する. ゴルジ装置もよく発達し, 分泌顆粒形成像が著明に認められた. これは分泌物放出後の機能亢進を示唆する像である.
副腎皮質抑制剤を投与したのちにも, 3型細胞のみが変化するけれども, 副腎摘出に比して変化がやや弱く, 14日後には ほとんど正常時と大差がなくなる.
以上の結果より, 3型細胞をACTH細胞と同定した. またこの細胞の形態は高等動物のそれ (黒住) とかなり相異し, 動物差の著明なことを示している.

著者関連情報
© 国際組織細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top