Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
変態期の正常カエル (Rana japonica Guenther) 甲状腺の微細構造と超微組織化学
I. 微細構造
難波 久佳
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1972 年 34 巻 3 号 p. 277-291

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抄録

ニホンアカガエル (Rana japonica Guenther) の甲状腺を 変態開始前から変態直後までの各期について 電子顕微鏡で観察した. この期間の甲状腺は 微細構造上 次の3段階に分類できる.
1. 変態前期 (premetamorphosis). この時期には甲状腺原基から濾胞の単位が完成される. 初期には 実質細胞は未熟な細胞の集団をなし, それらは多数の色素顆粒, 卵黄顆粒, 脂肪滴, 水解小体を含んでいる. この水解小体により 色素顆粒は消化されると思われる. 時に 隣接する二つの細胞間に原始濾胞腔が見られる. この原始濾胞腔をとり囲む細胞数は 日とともに増加し, また 周囲の結合組織が実質内に侵入して濾胞を形成していく. 同時に 細胞内の色素顆粒, 卵黄顆粒, 脂肪滴は消失していく.
2. 変態初期 (prometamorphosis). この時期には 未熟な細胞から甲状腺濾胞上皮細胞に微細構造の分化が起こる. 粗面小胞体が細胞の基底部から上層部にかけて発達し, ゴルジ装置が核上部に位置し, 表層部には分泌顆粒が見られるようになる.
3. 変態最盛期 (climax metamorphosis). 甲状腺がもっとも活発に機能を発揮する時期である. 内腔の拡張した粗面小胞体が細胞内に密に配列し, 細胞表層部にはゴルジ装置がよく発達し, 多数の分泌顆粒が見られる. この時期のもっとも特徴的なことは電子密度の高い 大きい小滴 (droplets) が数多く出現することで, そのほとんどは酸性フォスファターゼ反応が陽性である. 再吸収コロイドがこれにより加水分解されると考えられる. したがって, この時期はチロキシンの分泌がもっとも旺盛であると思われる.

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© 国際組織細胞学会
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