抄録
正常サル (Macaca fuscata と M. irus) 心内膜内皮の表面微細構造を走査型と透過型電顕で観察した. 心内膜は一層の内皮細胞におおわれ, 個々の細胞は細胞辺縁のひだ状の隆起と, 細胞中央に存在する核を被う隆起により識別される. また 細胞表面は多数の微細絨毛様突起におおわれる. 内皮細胞の大きさや その表面構造は 部位により著しい差を示した. とくに後天性弁疾患の多い僧帽弁や大動脈弁では, 細胞辺縁の隆起は微細絨毛様突起の連続より形成され, 細胞表面の微細構造は大小の飲みこみ小胞と密接な位置関係をもち, 流血中の物質の取りこみに何らかの役割を果たすものと考えられる. これらの表面微細構造の生物学的意義を明らかにすることは後天性弁疾患の機序解明に役立つであろう.