抄録
マウス有郭乳頭味蕾のモノアミンについて, 螢光組織化学と電子顕微鏡とを用いて検索した. 無処置マウスの味蕾細胞には螢光は観察されなかった. ナイアラマイドの前処置後, 5-ハイドロキシトリプトファン (5-HTP) を投与した例では, 一部の味蕾細胞に黄色螢光を認めた. ドーパおよびセロトニン投与例には, 味蕾細胞の螢光は認められなかった.
電子顕微鏡による観察では, 味細胞 (第III型細胞) に神経終末との求心性シナプス接触が見られるが, 5-HTP投与例において, この味細胞のシナプス膜に集合する小型の小胞の中に一部, 芯のあるものが観察された. 一方, この細胞の大型有芯小胞には, 著明な変化は認められなかった.
以上の結果は, マウスの味細胞が5-HTPを取込み, それをセロトニンに転換することを示している. さらにこのセロトニンは, 味細胞から神経線維への味覚伝達を媒介する神経伝達物質として味細胞のシナプス小胞内に貯蔵され, 放出されるものと想像される.