抄録
1. 虫様構造は コウモリでは活動期に多く出現し, 冬眠期には ほとんど出現しない. 虫様構造の発達には かなりの細胞差がある.
2. 虫様構造は 細胞質周囲の形質膜が 短く まっすぐに 細管状に陥凹して出来たものである. 虫様構造が十分に発達したものでは複雑に弯曲し, らせん状にねじれて分枝した細管となって細胞質中を走る. 細胞外につながるクッパー細胞表面に開口する末端部の細管の限界膜は, 一定の厚さをもつ細胞被覆によって包まれた形質膜と連続している. 細胞被覆につながる細管の基質には かすかな横紋と暗調の median dense line が見える. 大きな虫様構造は それぞれの細管が 互いに複雑にからみあって構成され, 細胞質の広い領域に細管の集団を作る. あるクッパー細胞では median dense line を持つ長いねじれた細管が細胞質を横断し, 類洞に面した両面で両方の末端が開口する.
3. 虫様構造が集団を作る細胞質領域では細胞小器官が消失する. 虫様構造と細胞小器官との関係は見られない. この所見は 虫様構造で占められている領域が 細胞質の外形質と似ていることを示唆する. これは虫様構造に沿ってしばしば出現する 大きな coated vesicle と虫様構造とが関係することからも支持される.
4. 虫様構造は血球を貪食したクッパー細胞でも とくに発達した像を示さない. 虫様構造は貪食胞に隣接してあるが, 両者に直接的な関係はない.
5. 虫様構造は類洞腔に接するクッパー細胞の表面の拡大に役立つものと考えられる.