Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
子ネコの肝臓実質, とくに脂肪摂取細胞の電子顕微鏡的研究
田沼 裕大畑 まさ子伊東 俊夫
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1981 年 44 巻 1 号 p. 23-49

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抄録

生後67日の雌の子ネコの肝臓実質の形態学的分化を 電子顕微鏡で観察した.
1) 肝細胞の分化は進んでいるが, ゴルジ装置の 毛細胆管を囲み 細胞先端部を占める位置は まだ確立されていない. 多数のミトコンドリアに混じて, 周板と結晶状芯をもつ球形のマイクロボディが多く存在する. 管状のSERはマイクロボディ周囲に見出され, グリコゲンα粒子の集積部には証明されない. 2) 類洞内皮細胞は十分に分化し,“細胞質突起”と“篩板”が区別され, 篩板の窓は平均直径1,300Åである. 3) クッパー細胞は活発な血球貪食を示す. 細胞表面を包む fuzzy coat は十分に保存されていない. 細胞質内に虫様構造の一部が証明された. 4) 個々の脂肪摂取細胞 (FSC) の脂肪滴の量は少ないが, 大部分はグリコゲンβ粒子の集積部に現われる. 脂肪滴をもたない空虚なFSCにもグリコゲンの集積がある. 脂肪滴を囲むグリコゲン集積はRERの小胞やミトコンドリアと密接な位置的関係を示す. グリコゲン, RER, ミトコンドリアの脂肪合成への関与が示唆される. 多くのFSCにおいて, 多数のRERの小胞は拡大し, 綿毛状物質で充満し, 膠原線維の前駆物質の合成を示唆する. FSCは多量のマイクロフィラメントと微細管をもち, 単一線毛がゴルジ装置内にある双中心子の一方からディッセ腔に出る. 5) 子ネコのディッセ腔にはFSCのほかに 形質細胞と大食細胞が出現し, 後者はクッパー細胞と超微構造が一致し, 類洞内皮層の中に組込まれて クッパー細胞に移行するものと思われる.

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© 国際組織細胞学会
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