Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
44 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 常木 和日子, 市原 冏一
    1981 年 44 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ニホンザル, カニクイザル, ウサギ, モルモット, ラット, ゴールデンハムスター (以上哺乳類), ハト, ウズラ (以上鳥類), アカミミガメ (爬虫類), ウシガエル, イモリ (以上両生類), ウナギ, ドジョウ (以上魚類) の肝臓を電子顕微鏡で観察し, 神経線維の検索を行なった.
    哺乳類と鳥類の肝臓は 肝小葉から構成され, グリソン鞘が発達している. 神経線維は調べられたすべての種で グリソン鞘にみられた. さらに ニホンザル, カニクイザル, ウサギ, モルモット, ハト, ウズラでは, 神経線維は肝小葉内にも侵入し, 直接 肝細胞に終っていた. 爬虫類, 両生類, 魚類の肝臓は, 肝細胞索の集合からなり, グリソン鞘は発達していない. アカミミガメでは, 神経線維は血管壁の結合組織や肝細胞に接してみられたが, 両生類や魚類では, 神経線維は少なく, ウシガエルとウナギにおいて わずかに結合組織中にみられたのみである.
    以上の結果から, 肝臓の自律神経支配は, 肝小葉とグリソン鞘の発達した高等動物で顕著であり, このような神経支配により, 哺乳類や鳥類では, 肝機能の神経による調節が可能になったと考えられる.
  • H. ISLER, R. KRSTIC
    1981 年 44 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    The morphology of the juxtaglomerular apparatus of the rat kidney was investigated by scanning electron microscopy of the freeze-fractured tissue. The macula densa cells have a dome-shaped apical surface abundantly provided with short microvilli. Their basal and lateral aspects may show labyrinthine spaces which are consistently more developed than in the epithelium across the tubular lumen. The Goormaghtigh cells display the well known complex pattern of cytoplasmic extensions forming the lacis. Fractured juxtaglomerular cells show distinct nuclei and well defined secretory granules. The well developed labyrinth of the macula densa suggests a considerable trans-epithelial fluid transfer at this level.
  • 田沼 裕, 大畑 まさ子, 伊東 俊夫
    1981 年 44 巻 1 号 p. 23-49
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    生後67日の雌の子ネコの肝臓実質の形態学的分化を 電子顕微鏡で観察した.
    1) 肝細胞の分化は進んでいるが, ゴルジ装置の 毛細胆管を囲み 細胞先端部を占める位置は まだ確立されていない. 多数のミトコンドリアに混じて, 周板と結晶状芯をもつ球形のマイクロボディが多く存在する. 管状のSERはマイクロボディ周囲に見出され, グリコゲンα粒子の集積部には証明されない. 2) 類洞内皮細胞は十分に分化し,“細胞質突起”と“篩板”が区別され, 篩板の窓は平均直径1,300Åである. 3) クッパー細胞は活発な血球貪食を示す. 細胞表面を包む fuzzy coat は十分に保存されていない. 細胞質内に虫様構造の一部が証明された. 4) 個々の脂肪摂取細胞 (FSC) の脂肪滴の量は少ないが, 大部分はグリコゲンβ粒子の集積部に現われる. 脂肪滴をもたない空虚なFSCにもグリコゲンの集積がある. 脂肪滴を囲むグリコゲン集積はRERの小胞やミトコンドリアと密接な位置的関係を示す. グリコゲン, RER, ミトコンドリアの脂肪合成への関与が示唆される. 多くのFSCにおいて, 多数のRERの小胞は拡大し, 綿毛状物質で充満し, 膠原線維の前駆物質の合成を示唆する. FSCは多量のマイクロフィラメントと微細管をもち, 単一線毛がゴルジ装置内にある双中心子の一方からディッセ腔に出る. 5) 子ネコのディッセ腔にはFSCのほかに 形質細胞と大食細胞が出現し, 後者はクッパー細胞と超微構造が一致し, 類洞内皮層の中に組込まれて クッパー細胞に移行するものと思われる.
  • 正村 和彦
    1981 年 44 巻 1 号 p. 51-69
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ネコ視覚領の交連結合を有する 分野17と18の境界域, 分野19の外側部およびシルビウス上回外側皮質に西洋ワサビ過酸化酵素を注入すると, 反対側半球の視覚領の各部において, 酵素で標識された神経細胞の多くはIII層に現われた. いずれの皮質部位においてもI層には標識細胞は認められなかった. 他の層における標識細胞の分布は皮質部位によってやや異り, 分野17と18の境界域では IV層の上部に かなりの数の標識細胞が分布し, 分野19さらにシルビウス上回外側皮質へゆくに従い, 皮質深層 (V, VI層) に分布する標識細胞の数に 増加が見られた. 視覚領各部の標識細胞の層分布様式は, 酵素が注入された場所が, それぞれの皮質領域に対応する部位であっても, 非対応部位であっても大差はなかった.
    交連結合を有する分野17と18の境界域, シルビウス上回外側皮質は 交連結合を欠く分野17のうち膨大回にある部分と比較して, より多くの中等大, ないし大型の細胞を含んでいた. これに対して, 後者のIII層は主に密につまった小型細胞によって占められていた. 分野17と18の境界域, 分野19の外側部およびシルビウス上回外側皮質のIII層の標識細胞の大きさの分布はいずれも単峰性で, 正の方向に著しい歪みを示した. III層の標識細胞の約50%は 小型細胞と これより大きい細胞 (中等大ないし大型) の2群が接する 狭い大きさの範囲に分布していた. III層の標識細胞の34.2-47.1%は より大きい細胞であった. III層でもっとも小型の細胞のうち, いくらかのものも標識されたが, これらは反対側大脳皮質の対応部位に酵素を注入した場合にのみ認められた.
  • 井上 金治, 黒住 一昌
    1981 年 44 巻 1 号 p. 71-85
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    去勢による性腺刺激ホルモン産生細胞の細胞数増加の機構については, 次の三つの可能性が考えられる. 1)成熟した性腺刺激ホルモン産生細胞が有糸分裂によって増殖する. 2)未熟な細胞から性腺刺激ホルモン産生細胞に分化する. 3)他の種類の腺細胞から性腺刺激ホルモン産生細胞に転化する. これらの可能性を探る目的で, 成熟雄ラットについて 正常ならびに去勢後の下垂体を採取し, 免疫組織化学とオートラジオグラフィの方法を用いて, 光学顕微鏡および電子顕微鏡的研究を行なった. 去勢後, 抗LHβ抗体に反応する細胞が著しく増加することが 形態計測によって明らかとなった. このような動物の下垂体前葉には, 性腺刺激ホルモン産生細胞の有糸分裂像と3H-チミジンの取り込みがよく観察される. また 電子顕微鏡的免疫組織化学によれば, 去勢ラットの下垂体では, 抗LHβ抗体に反応する未熟な細胞が観察される. これらのことによって, 去勢後の性腺刺激ホルモン産生細胞の増加は, 成熟した性腺刺激ホルモン産生細胞が 有糸分裂によって増殖することが主な要因であると考えられるが, 未熟な細胞からの性腺刺激ホルモン産生細胞への分化も無視できない. 今回の研究では 第3の可能性は証明できなかった.
  • 千葉 晃, 本間 義治
    1981 年 44 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    癒顎類に属する 3種 (クサフグ, ゴマフグ, アミモンガラ) 計15個体の神経性下垂体内に, 血管嚢の組織の一部が迷入しているのが観察された. この迷入組織は, 充実した多管状の構造で, 神経葉の後部に, その組織内に埋まるなり, 背縁に付着するなりして 存在している. クサフグでは, 走査電子顕微鏡により 王冠細胞が漏斗の上衣層にも迷入分布しているのが示された. これらの迷入した王冠細胞が神経性下垂体内に侵入した経路を, とくに胚期における神経性下垂体と血管嚢組織との連絡を考慮して討議した.
  • 関根 百合子, 油井 龍五
    1981 年 44 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1981年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    アカエイ (Dasyatis akajei) の膵内分泌細胞をアルデヒドフクシン-Masson-Goldner 染色および免疫組織化学的手法により観察した. アカエイの膵内分泌細胞は島を形成せず, 膵導管の二層上皮の外層にみられた. これは板鰓類の中で最も原始的な形態といえる. 内分泌細胞で導管内腔に達しているものを見いだすことはできなかったので, 閉鎖型の細胞と考えられた.
    免疫組織化学的手法により, 内分泌細胞には, インスリン, グルカゴン, ソマトスタチンおよび膵ポリペプチド (PP) 様免疫活性が認められた. PP陽性細胞はソマトスタチン陽性細胞の一部に当たることが見いだされ, その理由について論じられた.
    以上の所見から, これら4種類の膵島ホルモンは, 脊椎動物進化において かなり早期の段階から存在する基本的調節物質であると考えられる.
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