エゾアカネズミ(Apodemus ainu ainu TOKUDA) 成熟雌雄の顎下腺の微細構造, 分泌顆粒の性状, 顆粒管直径の性差について調べた. 顎下腺は線条部, 顆粒性膨大部 (顆粒管), 介在部と終末部とに分けられる. 終末部は両性ともに漿粘液性で, 分泌顆粒はグリコプロテインを含むが, アミラーゼとプロテアーゼ活性を示さなかった. 顆粒の成熟に応じたグリコプロテインの分布と微細構造変化が示された. 顆粒管細胞はトリプトファン, チロシンと中性粘液多糖類を含有するが, 酸性粘液多糖類, プロテアーゼ, アミラーゼやグリコプロテインを含まなかった. 顆粒内容はアポクリン分泌突起を介して導管内に分泌されていた. 線条部には暗調細胞と明調細胞がみられ, 各々の細胞頂部には小胞がみられた. 一方は再吸収小胞と思われ, 他方は分泌小胞と思われた. 顆粒管直径の計測から, 雄顎下腺の顆粒管の直径は, 雌のそれよりも有意に大きかった.