1981 年 44 巻 4 号 p. 373-384
爬虫類に属するカナヘビ, ヤマカガシおよびイシガメの肝臓の伊東細胞を電子顕微鏡で観察した.
観察したいずれの動物においても伊東細胞はディッセ腔内にあり, 通常脂肪滴を含んでいた. ブタの肝臓を飼料として飼育したイシガメの伊東細胞の脂肪滴は数も多く, 形も大きかった. 野外で捕獲したカナヘビとヤマカガシの伊東細胞の脂肪滴は数も少なく, 形の小さいものが多かった. ヤマカガシでは脂胞滴をもたない“空虚な伊東細胞”がしばしば観察された. 内腔の拡大した粗面小胞体がカナヘビとヤマカガシの伊東細胞にみられたが, イシガメにはみられなかった. 動物の栄養状態, とくに食餌中のビタミンAの含有量の多少が, このような相違をもたらしたものと思われる.