抄録
著者等は胃腺壁細胞の機能を支配する因子を探究すべく空腹ラッテにゴマ油の胃内注入 (実験1), Atropin を注射した後ゴマ油を注入 (実験2), 豚胃粘膜抽出液を皮下注射 (実験3), Atropin を注射した後 Histamin を注射 (実験4) の4実験を行った.
ゴマ油を注入すると, 壁細胞には分泌物新生, 放出が旺盛となり, 60分後を極として再び平靜にかえる. この機能的動態就中新生機能の動きは胃粘膜表在細胞に於ける Productin 空胞の消長とよく一致する点に於て甚だ興味深い.
処が予めAtp. を注射しておくと, 壁細胞機能像は新生, 放出共低調で, 而も早く終了する. 此時胃粘膜表在細胞では Productin 空胞は一時稍々減少するが, 再び増加し充満するに到る. 斯る所見より壁細胞機能は Productin によって大きく影響されることが推察される. 之は更に胃粘膜抽出液を注射すると壁細胞はゴマ油注入後と類似の而もより旺盛な機能像を示すこと及びAtp. 注射後Hist. を注射すると非常に旺盛な新生及び放出像が現われることの2つの成績によって一層明確にされる.
著者等は之等の成績を藤江の曩に得た成績に追加して, 1胃腺主細胞及び壁細胞の機能を支配する因子の主たるものは胃粘膜表在細胞より内分泌せられる Productin であること, 2. 自律神経は之等胃腺細胞に対するよりも寧ろ胃粘膜表在細胞の Productin 分泌機能に対して大なる影響を与えること, を結論することが出来る.