Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人鼻前庭の神経分布. 附鼻前庭の微細構造の観察
瀬戸 八郎定 忠
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1954 年 7 巻 1 号 p. 143-154

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抄録
人鼻前庭は鼻毛を有する外皮部と内方に接する粘膜部とに大別され, 後者は更に前方より角質部, 非角質部及び境界部に区別される. 之等粘膜各部の拡散範囲は極めて動揺性を示す. 乳頭は角質部に於て発達著明なるも, 後方では甚だ劣勢である
粘膜部の植物神経は鼻腺層内で粘膜下膜神経叢を作る. 植物神経終末は腺末端部及び其輸出管に対し接触的主宰関係を示す終網で表わされる. 又乳頭内にも終網の形成を見る. 之は特に血液毛細管の主宰に与る.
鼻前庭に対する知覚神経の発達は左程良好ではない. 其大部分は固有膜特に乳頭内に終止するか或は更に上皮内神経に移行する.
乳頭内では非分岐性及び単純性分岐性終末の外, 非被膜性糸毬状終末, 陰部神経小体類似の有被膜性糸毬小体及び Meissner 氏触小体様終末の存在を見るが, 後2者は稀に発見されるに過ぎない.
上皮内神経は乳頭の発達劣勢な境界部では甚だ稀で且つ甚だ線細な単一線維から成る. 非角質部では稍々其太さを増し, 且つ屡々単純な分岐性として表わされるものも見られる. 角質部では一層強力となり, 分岐もより屡々行われる. 角質鱗所有の角質部では以上の上皮内線維の外, 特異型のものも発見される. 之は強力な乳頭突出により生ずる甚だ菲薄な上皮内に形成される太く短い上皮内線維から成る.
鼻前庭外皮部に於ても甚だ稀に細い上皮内線維の存在を見る. 胎生時の遺物的存在と思考される.
尚お上皮内線維は鼻腺輸出管にも発見される. 然し之は甚だ単純性のものであり且つ極めて稀に見られるに過ぎない.
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© 国際組織細胞学会
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