抄録
症例は89歳男性で、嗄声を主訴に近医を受診し右反回神経麻痺を指摘、精査加療目的に当科紹介受診となった.喉頭ファイバースコピーにて右反回神経麻痺を認め、ほか咽喉頭に特記すべき異常所見を認めなかった.頸胸部単純+造影CT検査を施行したところ、右鎖骨下動脈瘤を指摘され、動脈瘤による右反回神経麻痺が嗄声の原因と考えられた.その後右鎖骨下動脈瘤について当院心臓血管外科へ紹介し、年齢や治療による侵襲を考慮して経過観察の方針となった.右鎖骨下動脈瘤は頻度の少ない疾患であり、右反回神経麻痺の原因となることも臨床的に稀である.破裂により致死的となる可能性もあるため、嗄声のみで耳鼻咽喉科が初診となる症例を見逃さないことが重要である.