本稿では,Land Ethicを提唱したアルド・レオポルド(1887-1948)に照射し,これまでわが国ではほとんど知られていなかった教育者としてのレオポルドの側面を紹介する.レオポルドは1933年に米・ウィスコンシン大学に教授として就任,狩猟鳥獣管理の講座を担当し,以後1948年までに大学院生26名を輩出した.この報告では,大学院学生と民主主義的な関係性を築きかつ尊敬と信頼を集めるLeopoldの教員としてのスタンスについて述べる.また彼の講座は他の例を見ない唯一の内容であり,手をかけて作成された資料を利用して行われていることについて説明した.その教育のねらいは知識やデータの部分的で機械的な理解にとどまらず,自らの体験と結びつけて自然界について考察する観察眼を醸成することであった.知識偏重といわれる日本の教育内容は根本的に見直される必要があるかもしれない.レオポルドの教育法は時代と分野を超えて,現代の私たちに多くのヒントを与えるものである.