抄録
石油や天然ガスなどの燃料物質は、しばしば化学エネルギーの代表例として説明される。しかし、化学エネルギーは反応物質全体の系の内部エネルギーであるし、そもそも燃焼反応では燃料物質よりも酸素のエネルギーが主役であるとする見方もあることから、酸素を含めるべきである。また、高校化学では、反応熱の説明にエンタルピーが使われるようになり、反応物質のもつ化学エネルギーがエンタルピーであると生徒に理解されがちである。しかし、エンタルピーは内部エネルギーとは異なる物理量で、系が外界とやりとりする仕事が隠されてしまうのは、熱力学第一法則の学習と整合しない。物理教師も、化学での指導内容を把握して、適切な対応をすべきであろう。