抄録
京都府内のナラ枯損発生直後の2林分でコナラとミズナラへのカジノナガキクイムシの穿入状況と立木の被害状況を調査した。カジノナガキクイムシに穿入される立木の割合はミズナラとコナラで高く,これらの立木では穿入密度も高かった。これら2樹種では穿入密度は樹幹直径が大きいほど高く,両樹種に差はなかった。しかし,被穿入木の枯死率はミズナラがコナラよりも高かった。以上のことから,カジノナガキクイムシは直径の大きいコナラとミズナラに好んで穿入し,ミズナラがより枯死しやすいことが明らかになった。調査地の一つでは,本数調整伐とナラ類の巻き枯らしを行った箇所,もう一つでは本数調整伐を行った箇所から被害が拡大しており,老齢大径化したミズナラを含む林分において,これを残す伐採が被害を誘発する可能性が示唆された。